幻の葛湯
今週のお題「お気に入りの飲み物」
珈琲!
……をネタにすることも考えたが、もう少しじっくり考えてみた。
・確かに、コーヒーは好きで、毎朝飲んでいる。
・実家では豆をゴリゴリ挽いて作っていた。毎朝。
・そのせいか、うちの実家は犬とコーヒーのにおいが染み付いていた。(犬も飼っていた)
・コーヒー豆は親が買ってくるので、九州にいたときの私は「カルディって何屋さん?」とか言っていたのだが、今はカルディの面白さに目覚めている。
まあ、書けるっちゃ書けるけれども……
コーヒーは「お気に入りの飲み物」というよりは「趣味」って感じなんだよなあ。なんて。
そこで、記憶を遡ってみた。
仙台に来た。実家で暮らしていた。大学時代は東京にいた……
大学生の私は、自炊はほとんどしていなかった。
それでも、一応カセットコンロと鍋は持ち込んでいて、やろうと思えばできたのだが……
4年間、カセットコンロと鍋はひたすら葛湯とココアに使われていた。
自炊していなかったにも関わらず、私が自主的に作って飲んでいたもの……これこそが「お気に入りの飲み物」なのでは!?
葛湯
私は葛湯が好きだ。
と言っても、私が作るのは、
①鍋に少量のお湯を沸かす。
②片栗粉を大さじ1入れる。
③蜂蜜を適当に入れる。
③混ぜる。
④牛乳をガバッと入れる。
⑤混ぜる。
……葛湯というか、片栗粉牛乳?
普段はカロリーを気にして片栗粉を入れすぎないよう注意するが、疲れた時は片栗粉多めで作ると元気が出る。
人生で初めて葛湯を飲んだのは、ずっと昔、たぶん小学生のとき。
その日はお母さんが夜にどこかに出かけていて、おばあちゃんが面倒を見に来てくれた。夕食が何だったかは覚えていないが、とにかくグラタンではなかった(←これ、後から生きてきます)。
その後にデザートとして出してくれたのが、牛乳片栗粉湯だった。
それがとても美味しかった。
……まさか、この葛湯が、幻となるなんて。当時の私は知る由もなかったのだが。
後日、私が葛湯をいたくお気に召したということで、お母さんも作ってくれた。
しかし、
「あれ? コレジャナイ……」
お母さんが作ってくれたのは、(今になって思うと)普通の葛湯。
片栗粉と牛乳で作った、トロっとした、あの葛湯。
しかし、当時の私が覚えていたのは、
「もっと固くて、こう、グラタンの最後の方みたいな……」
母、混乱。
冷えたグラタンって、固まってぐちゃぐちゃになってくるじゃないですか。
あれの甘いバージョンみたいなやつだったんですよ。
……本当なんですよ!!!
と説明を尽くしてみた。
お母さんは、片栗粉を追加して作ってみてくれた。片栗粉が多いほど固くなるのだ。
しかし、どうしても、あの、ぐちゃっとした感じが出ない。
おばあちゃんに聞いてみた。
祖母「片栗粉と牛乳と蜂蜜よ」
母・私「ですよね」
どんなに片栗粉を追加しても、何かが違う。
母「ちなみにその日の夕飯は……」
私「グラタンではないです」
その以来、お母さんがちょくちょく葛湯を作ってくれるようになった。
部活で疲れた夜、受験勉強の夜、風邪をひいた夜……
葛湯は母の味。
祖母の味の葛湯は、幻になった。
〜完〜
↑本編とは全く関係ない桜